yukiの日記

^05/22 09:49

『短編小説「じゃむ・3」』

実際彼女の舌は30cmまでは伸ばせるようだった。
キスしているときにそのまま舌を伸ばしてきた。
そのまま彼女に身を任せていたら、
舌はやがて咽喉から腹部へと下ってきた。
反射が彼女を拒もうとする。
彼女は大丈夫よ、とだけ言って僕をまさぐり続けた。
吐き気はする。
彼女は大丈夫よ、という。
飲んであげるという。
ああ、あの嘔吐感の気持ち良いことときたら。


街を歩いて喫茶店に入る。
紅茶を二つと彼女にいちごショートをたのむ。甘いものを食べている女の子が
こんなにかわいいなんて知らなかった。
世の中にこれ以上の至福はないといった顔で、
生クリームをほおばる。
いちごとその周辺だけ残しておいて、
最後に一口でぱくん、といいそうな表情で食べて、
なんだかたまらなそうに目を閉じて、
おいしいぃぃぃといった。
あぁ、かわいいなと見とれていたら、
頬についたクリームを舌先でさっと舐めとった。

つまりは僕のいらいらはずいぶん減っていた。
そうして半年もの時間が過ぎていた。
おそらく異端なる彼女に選ばれた僕の陰湿さは、
彼女によって解消されてきたのかもしれなかった。

それはわかっていた。
おそらくは彼女にもわかっていて、
それでも僕たちはいつもそばにいて、
いつもキスをしていた。

僕の健全さが彼女との距離を作る、
でも僕は彼女が好きなのだった、そう思った。
失うことの怖さを気持ちで埋めようとした。
ぎりぎりで陰湿さを保てた。
それもそう長くはなかった。

その日、僕はじゃむの体を求めた。
どうして?と言われた。
好きだからだ、と言った。
ずっと悩んでいた。
周囲のからかいもあった。
なんだ半年も付き合っててまだヤってないのかよ、
そのオンナおかしいんじゃないの?
だからあせった。
違う、本当は考えあぐねていた。
教えて誰か彼女だけ大切にする方法を。
今の、今の僕で。
それだけが手の届かぬそこに宙ぶらりんで、在った。

「別れましょう」
彼女は言った。
もう顔が見られなかった。
顔を伏せて身動きが取れぬまま。

「あのね、抱きたいならそれでもいいのよ。
でもね、蛇のセックスは24時間続くのよ。
それで私を満たしてくれるんなら、いいわ。」

僕は結局大馬鹿だった。
ものすごいスピードで突っ走り、
それがコーナーに差し掛かったとたん、
結局ブレーキしか踏めなかった。
だからスピンして、激突するしかなかった。
僕がするべきだったのは、ハンドルを逆にきり、
そしてアクセルを踏むことだった。
半年の思い出などというひとつだけの銃弾をこめ、
ただ打ち込むことだった。
手ひどいハンデをしょわされた賭けだった。
そして無抵抗に敗れたのだった。
誇りもなにも後悔も何も、思いも何も、
気持ちも何も、何も、何も。



続く



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